「お金がなくて簡素なお葬式すらできない」
「生活保護を受けている人はお葬式ができない」
そういった話を、あなたもどこかで聞いたことがあるかもしれません。
でも、実際にはどちらの話も正しくはありません。確かにお金がなければ豪華なお葬式はできませんが、簡素なお葬式であれば、おそらく誰でもすることができるからです。
例え生活に困窮していて、生活保護を受けているような人であっても、国からの補助があるので最低限のお葬式すらできないということはあり得ません。
なので、もし「お金がなくてお葬式が・・・」という風に悩んでいるのであれば、ぜひこの続きを参考にしてみてください。国からの補助を受ける方法や、それに見合ったお葬式の仕方などについて解説しています。
このページが少しでもあなたのお役に立てるのであれば、とても嬉しく思います。
火葬(または土葬)は絶対にしなければならない
お葬式は絶対にしなければならないかというと、実はそんなことはありません。
なぜなら、日本の法律ではお葬式をすることが義務にはなっていないからです。お葬式をするもしないも、法律的な観点からすれば、遺族が自由に決めてしまっても何ら問題はありません。
ただし、
- 役所への死亡届の提出
- 火葬(または土葬)
この2つに関しては、法律でも必ずしなければならないと定められています。
※日本では土葬が認められている地域は限られており、火葬が行われるケースがほぼ100%だといわれています。
よって、お葬式をしなければ全く何もしなくていいかというと、当然ですがそういうわけにはいかないのです。火葬(または土葬)は絶対にしなければならないし、それに伴い「遺体の搬送」と「安置」も必然的にセットになります。
それらを滞りなく済ませることが、いわば遺族としての最低限の責務。勿論お金もかかりますが、こればかりは「お金がないから・・・」という理由で無責任に放棄することはできないのです。
「でもお金があまりない」
そんな時はどうすればいいかというと、次に解説する「葬祭扶助」を利用するという方法があります。
お金がなくて葬式ができない人のための葬祭扶助とは?
葬祭扶助とは生活保護法という法律によって定められたもので、生活保護受給者をはじめ生活が困窮していてお葬式をするお金が無い人に対して、その費用を国が負担するという制度のことです。
厚生労働省のホームページには、葬祭扶助の相談・申請窓口は、
- 現在住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当
- 福祉事務所を設置していない町村の場合は、町村役場でも申請の手続が可能
といったことが書かれています。
また、支給される金額については、
- 定められた範囲内で実費を支給
そう書かれています。
これは地域によって多少の違いはあるようですが、大人で約20万円、小人で約16万円が支給されるようです。
尚、その目的からして、葬祭扶助は申請をすれば誰でも受けられるというものではありません。葬祭扶助を受けるためには、まず前提として故人が生活保護受給者であるなどお葬式のための資産を残していないこと。
その上で、以下の2つの条件のいずれかを満たしている必要があります。
- 喪主も生活保護を受けるなど生活が困窮していてお葬式費用を負担できない
- 故人に扶養義務者がいないためそれ以外の人がお葬式の手配をしなければならない
もし上の条件を満たしているなら、管轄の福祉事務所(または町村役場)に相談してみましょう。
葬祭扶助の対象範囲
約20万円という金額が示す通り、葬祭扶助の申請が通ったとしても豪華なお葬式は挙げられません。
しかも、葬祭扶助の対象範囲は下の3つだけと限定的です。
- 遺体の搬送
- 火葬(または土葬)
- 納骨やその他葬祭のために必要なもの
僧侶を手配する費用などは、葬祭扶助の対象外です。なので、僧侶を呼んで読経をあげてほしい、戒名をつけてほしいといった場合には、そのためのお布施を自力で用意しなければいけません。
直葬という選択肢について
僧侶を呼ぶ呼ばないは別として、とにかくお葬式にお金をかけない(かけられない)なら直葬という選択肢があります。直葬とは通夜や告別式などを行わない、火葬のみのお葬式のことで「火葬式」とも呼ばれています。
遺体の搬送や火葬といった必要最低限のことだけを行うことで、葬祭扶助の範囲内(約20万円)に収まることも多いため、最近特に注目されている新しいお葬式のかたちです。
そんな直葬のメリットやデメリットとは?以下に解説していきましょう。
メリット
最大のメリットはお金がかからないことです。どのお葬式の形式よりも、直葬の費用が最も安いことは間違いありません。
あとは、これをメリットと感じるかどうかは人によりけりですが、
- 通夜や告別式を行わないだけに所要時間が短い
- 儀礼的な参列者の対応に追われることがない
お葬式をしている間の遺族の肉体的、精神的負担が軽いという点も、もしかしたら直葬のメリットといえるのかもしれません。
デメリット
近年、直葬を選ぶ人は増えていますが、それでも割合からすればまだまだ少数派。親戚などから理解を得られないことは十分に考えられます。
菩提寺があるのに勝手に直葬を決めてしまうと、後で納骨を拒否されるなど、大きなトラブルに発展する可能性も。なので、くれぐれも自分だけで決めてしまわないように、周囲の主だった人や菩提寺とも事前によく相談をすることがとても大切です。
また、直葬では故人とお別れをする時間が十分に取れません。時間的にも内容的にも全てが簡素になってしまうので、例えその時は何とも思わなくても、後で「あれで本当に良かったのだろうか・・・」と後悔してしまう恐れがあります。
お別れの時間を確保したい場合は、家族葬や一日葬も検討してみてはいかがでしょうか。
簡素でも心を込めて
直葬を検討する際は、メリット以上にデメリットのことをよく考えてください。周囲とも相談して、それでも「直葬にしたい」あるいは「直葬しかできない」という結論に達したのであれば、それがあなたにとってのベストな選択だと思います。
あとは、簡素なお葬式でも精一杯心を込めて送ることが、故人にとってもあなたにとっても一番大切でしょう。