分骨のやり方を自分で。証明書の手続きと注意点をまるごと解説

大切な方の遺骨を分けて供養する「分骨」を、ご自身の手で行いたいとお考えではありませんか。しかし、具体的なやり方や法的な手続き、特に証明書について分からず、不安を感じている方も多いでしょう。遺骨を扱うだけに、失敗や後悔はしたくないものです。

この記事では、自分で分骨を行う具体的な手順から、分骨証明書の発行手続き、そして分骨後の供養方法までを網羅的に解説します。最後まで読めば、安心して故人を偲ぶための分骨を進める知識が身につき、後悔のない選択ができるようになります。

自分で分骨しても問題ない？基本的な知識

故人の遺骨を分ける分骨について、ご自身で行うことに法的な問題はありません。しかし、大切な遺骨を扱う上での基本的な知識や、周囲への配慮は欠かせません。この章では、分骨の定義から法律的な側面、そしてよくある疑問について解説します。

そもそも分骨とは遺骨を分けて供養すること

分骨とは、火葬後のご遺骨を複数に分け、それぞれを異なる場所で供養することです。例えば、お墓と手元供養、あるいは兄弟で別々にお墓を建てる場合などに行われます。故人をより身近に感じたいという想いや、遠方に住む親族への配慮など、様々な理由から選ばれています。

この方法は、故人を偲ぶ形を多様化させるための選択肢の一つと言えるでしょう。それぞれのライフスタイルに合わせた供養が可能になるため、近年では珍しいことではなくなりました。

自分で分骨することは法律的に問題ありません

ご遺骨をご自身の手で分けることに、法的な制約はありません。「墓地、埋葬等に関する法律」においても、分骨自体を禁じる条文はないため、誰でも行うことが可能です。専門の業者に依頼せずとも、ご家族の手で進めることができます。

ただし、その後の納骨や散骨には「分骨証明書」が必要になる場合があります。法律違反にはなりませんが、適切な手順と故人への敬意を払うことが何よりも大切です。正しい知識を持って、丁寧に行いましょう。

分骨は縁起が悪いというのは本当？

「分骨すると故人が成仏できない」「体がバラバラになり縁起が悪い」といった話を聞くことがありますが、これは迷信です。仏教では、お釈迦様のご遺骨（仏舎利）が世界中に分骨され、大切に祀られているという歴史があります。

このことからも、分骨が宗教的に問題視される行為ではないことがわかります。最も重要なのは、故人を大切に思い、供養する気持ちです。迷信に惑わされず、ご自身の想いを大切にしてください。

分骨を自分で行う具体的なやり方と手順

実際に自分で分骨を行う際には、適切なタイミングや準備、そして遺骨の丁寧な取り扱いが求められます。ここでは、具体的な手順を一つひとつ詳しく解説していきますので、安心して作業を進めるための参考にしてください。

分骨に適したタイミングは納骨前と納骨後

分骨を行うタイミングは、大きく分けて「火葬後、納骨する前」と「お墓に納骨した後」の2つがあります。火葬場で分骨を申し出れば、その場で対応してもらえるため、手続きが比較的スムーズに進みます。

一方、納骨後に分骨する場合は、お墓から骨壷を取り出す作業が必要です。手続きの簡便さから、火葬の際に分骨を行うのが一般的ですが、どちらのタイミングでも分骨は可能です。ご自身の状況に合わせて計画しましょう。

自分で分骨する際に準備するものリスト

ご自身で分骨を行う際は、故人への敬意を払い、清潔な環境で行うことが大切です。事前に必要なものを揃えておくと、落ち着いて作業を進めることができます。以下のリストを参考に、準備を整えましょう。

• 分骨用の小さな骨壷
• 清潔な手袋（ビニール製など）
• 遺骨を扱うための箸（木製や竹製の新しいもの）
• 遺骨を一時的に置くための和紙や白い布
• 骨壷の蓋を開けるためのカッターナイフやハサミ
• 作業を行うための清潔な敷物

分骨する遺骨の選び方と注意点

分骨する際に、どの部位の骨を選ばなければならないという決まりは一切ありません。一般的には、仏様が座禅を組んだ姿に見えることから「喉仏（第二頸椎）」や、故人の体の一部として分かりやすい指の骨などが選ばれることが多いです。

しかし、故人との思い出を大切にし、ご自身が納得できる部位を選ぶことが何より重要です。ご遺骨は非常にもろいため、力を入れすぎず、そっと扱うように心掛けてください。

骨壷の蓋の開け方と遺骨の取り扱い方

骨壷の蓋は、湿気や衝撃を防ぐためにテープで密封されていることがほとんどです。まず、カッターなどを使って慎重にテープを切り、ゆっくりと蓋を開けます。蓋が固い場合もありますが、焦らずに少しずつ力を加えましょう。

蓋を開けたら、ご遺骨には素手で触れず、必ず清潔な手袋と箸を使用してください。分骨用の骨壷に移す際は、遺骨を崩さないよう、丁寧にそっとつまんで移動させます。作業が終わったら、元の骨壷の蓋をしっかりと閉めて完了です。

分骨証明書の手続きをタイミング別に解説

分骨した遺骨を別の場所へ納骨する際には、「分骨証明書」という公的な書類が不可欠です。この証明書がなければ、新しい納骨先で受け入れを断られてしまう可能性があります。ここでは、証明書の手続きについて詳しく見ていきましょう。

分骨証明書とはどのような書類か

分骨証明書とは、分骨したご遺骨が「誰のものであるか」を公的に証明するための大切な書類です。故人の氏名、死亡年月日、火葬年月日、そして分骨を行った事実などが記載されています。遺骨の不法な移動や売買を防ぐ目的もあります。

この書類があることで、新しい納骨先の管理者は安心してご遺骨を受け入れることができます。遺骨管理において、非常に重要な役割を担う証明書だと理解しておきましょう。

分骨証明書が必要なケースといらないケース

分骨証明書が必要になるのは、主に分骨した遺骨を別の墓地や納骨堂に「納骨」する場合です。一方で、自宅で保管する「手元供養」のみを目的とする場合は、法律上、分骨証明書は必要ありません。

ただし、将来的に納骨する可能性が少しでもあるなら、後々の手続きをスムーズにするために取得しておくことを強くお勧めします。以下の表で、具体的なケースを確認しましょう。

【納骨前】火葬場で証明書を発行する方法

火葬後、まだお墓に納骨する前に分骨する場合は、火葬場で手続きを行うのが最も簡単です。火葬を依頼する際に、事前に「分骨を希望します」と葬儀社や火葬場に伝えておきましょう。分骨したい数だけ申し出てください。

そうすれば、火葬当日に「火葬証明書（分骨用）」という名称の書類を発行してもらえます。このタイミングでの発行が、最も手間なくスムーズな方法です。費用は数百円程度かかる場合があります。

【納骨後】墓地管理者から証明書をもらう手順

すでにお墓に納骨されている遺骨を分骨する場合、手続きの窓口は現在お墓がある場所の管理者になります。お寺の住職や霊園の管理事務所に「分骨をしたい」という旨を相談し、分骨証明書の発行を依頼してください。

管理者から指定された申請書に必要事項を記入し、提出します。申請者の本人確認書類や故人との続柄がわかる戸籍謄本などが必要になる場合があるため、事前に確認しておきましょう。

分骨証明書を紛失した場合の再発行手続き

万が一、分骨証明書を紛失してしまった場合でも、再発行は可能です。焦らずに、証明書を発行してもらった窓口（火葬場または墓地管理者）に連絡を取り、再発行の手続きについて問い合わせましょう。

再発行には、申請者の本人確認書類や、故人との関係を証明する書類の提出が再度必要となることが一般的です。手続きには時間がかかる場合もあるため、紛失に気づいたら早めに行動することが大切です。

分骨証明書の発行にかかる費用の目安

分骨証明書の発行にかかる手数料は、発行元によって異なります。一般的に、公営の火葬場や墓地であれば無料または数百円程度と比較的安価な傾向にあります。書類の発行手数料として定められていることが多いです。

一方、民間の霊園やお寺の場合は、施設ごとに料金設定が異なり、数千円程度かかることもあります。費用については事前に発行元へ問い合わせて確認しておくと安心です。

分骨した後の遺骨の供養方法と注意点

分骨を終えた後、その遺骨をどのように供養していくかは非常に大切な問題です。手元供養や新たな場所への納骨など、様々な選択肢があります。ここでは、代表的な供養方法と、親族間でのトラブルを避けるための心得について解説します。

自宅で保管する手元供養という選択肢

手元供養は、分骨した遺骨を自宅に置き、供養する方法です。小さな骨壷（ミニ骨壷）に入れてリビングに置いたり、遺骨を粉末状に加工してペンダントなどのアクセサリーに納めたりと、その形は様々です。

故人をいつも身近に感じていたいという方に選ばれている供養の形です。法律上の制約もなく、分骨証明書も不要なため、比較的自由に行うことができます。

別の場所に納骨する場合の手続き

分骨した遺骨を、実家のお墓や新しく用意した納骨堂などに納める場合は、その場所の管理者との手続きが必要です。事前に納骨の相談をし、受け入れの許可を得てから、指定された日時に遺骨を持参します。

その際、必ず「分骨証明書」の提出を求められますので、忘れずに持参しましょう。納骨法要などを行う場合は、僧侶への連絡なども併せて進める必要があります。

散骨や樹木葬で自然に還す方法

故人の遺志を尊重し、遺骨を自然に還す散骨や樹木葬も供養の一つの選択肢です。散骨は、遺骨を粉末状（粉骨）にして海や山に撒く方法で、節度を守れば個人でも行えますが、トラブル防止のため専門業者に依頼するのが一般的です。

樹木葬は、墓石の代わりに樹木をシンボルとするお墓です。どちらの方法も、業者に依頼する際には分骨証明書の提出が必要になるケースがほとんどです。

親族とのトラブルを避けるための心得

分骨は、時に親族間の意見の対立を生むデリケートな問題です。ある人は手元に置きたいと考え、別の人はお墓に全て納めるべきだと考えるかもしれません。こうしたトラブルは、故人を思う気持ちが強いからこそ起こり得ます。

最も大切なのは、分骨を考える段階で、関係する親族としっかり話し合うことです。なぜ分骨したいのか、その後の供養はどうするのかを誠実に伝え、全員の理解と合意を得てから進めるようにしましょう。

まとめ：自分で分骨する手順と証明書の手続き

この記事では、ご自身で分骨を行う際の具体的なやり方から、分骨証明書の手続き、そして分骨後の供養方法までを詳しく解説しました。自分で分骨することは法律的に問題ありませんが、故人への敬意を払い、丁寧に行うことが大切です。

また、新たな場所へ納骨する際には分骨証明書が不可欠となります。事前の話し合いと適切な手続きを踏むことで、後悔のない供養を実現できます。この記事が、あなたの大切な選択の一助となれば幸いです。

分骨のやり方や証明書でよくある質問

分骨に関して、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。手続きを進める上での不安や、今さら人には聞きにくいと感じていることなど、ここで解決していきましょう。

分骨証明書がないと納骨できませんか？

はい、ほとんどの場合、分骨証明書がないと新しいお墓や納骨堂への納骨はできません。受け入れ先の管理者は、その遺骨が誰のものであるかを公的に確認する必要があるため、この証明書の提出を義務付けています。

遺骨の身元を証明し、トラブルを防ぐための重要な役割を果たしています。分骨した遺骨を納骨する予定がある場合は、必ず取得しておきましょう。

家族に内緒で勝手に分骨してもいいですか？

法律上は罰せられませんが、家族や親族に内緒で分骨を行うことは、深刻なトラブルの原因となり得ます。遺骨は、特定の一人のものではなく、故人に関わる人々にとって大切な存在です。

後から事実が発覚した場合、信頼関係を大きく損なう可能性があります。分骨を希望する場合は、必ず事前に関係者と話し合い、全員の合意を得ることを強くお勧めします。

分骨証明書はどこで発行してもらえますか？

分骨証明書の発行元は、分骨するタイミングによって異なります。火葬後すぐ（納骨前）に分骨する場合は「火葬場」が発行します。すでにお墓に納骨されている遺骨を分骨する場合は「墓地の管理者（霊園やお寺）」が発行元です。

ご自身の状況がどちらに当てはまるかを確認し、適切な窓口に申請してください。どちらか分からない場合は、市区町村の役所に問い合わせてみるのも良いでしょう。

手元供養の場合も分骨証明書は必要ですか？

分骨した遺骨をすべてご自宅で保管する「手元供養」のみを行う場合、法律上は分骨証明書を取得する義務はありません。自宅に置くだけであれば、公的な手続きは不要です。

しかし、将来的に心境が変わり、お墓に納骨したくなる可能性も考えられます。後から証明書を取得するのは手間がかかるため、念のため発行しておくことが賢明な判断と言えるでしょう。

骨壷の蓋を自分で開けても大丈夫ですか？

はい、ご自身で骨壷の蓋を開け、分骨を行うことに何の問題もありません。ただし、作業は故人への敬意を込めて、慎重に行う必要があります。清潔な場所で、手袋や清潔な箸を用意して臨みましょう。

ご遺骨は非常に脆く、崩れやすいものです。大切な方を扱うという気持ちを忘れずに、丁寧に取り扱うことが最も重要です。決して乱暴に扱わないようにしてください。