
墓じまいは、これまで先祖代々守ってきたお墓を整理し、供養の形を新たにする大きな節目です。しかし、親戚との費用分担や香典・お布施といったお金の問題で悩む方も少なくありません。気持ちよく墓じまいを終え、親族関係を円満に保つためには、事前にしっかりと準備し、マナーを守って対応することが重要です。
本記事では、親戚に包むお金に関する必要性や相場、注意点について詳しく解説し、安心して墓じまいを進めるための知識をお届けします。
墓じまいで親戚に包むお金の必要性とは?
墓じまいは、単にお墓を片付ける作業にとどまらず、故人や先祖に対する感謝の気持ちを形にする大切な儀式です。このため、関わる親戚や僧侶に対してお金を包むことが一般的とされています。しかし、「そもそもお金を包む必要があるのか」と疑問に思う方も少なくありません。
まず、墓じまいには供養や閉眼供養など宗教的な儀式が伴うことが多く、その際に読経をお願いする僧侶には「お布施」を包むのが一般的です。また、親戚が集まる場合、遠方から来る方には交通費や宿泊費など負担が生じることもあります。そのため、香典や御車代などを用意しておくことで、お互いに気持ちよく式を進めることができるのです。
特に親戚関係は、後々の付き合いにも影響するため、金銭面での配慮が円滑な関係維持につながります。「形式だから」と割り切るよりも、「お互いに感謝し合う気持ち」と考えれば、納得しやすくなるでしょう。
墓じまいにおける香典やお布施の役割
墓じまいでは、香典とお布施が混同されやすいですが、両者には明確な違いがあります。香典は、主に法事や葬儀で弔意を示すために親戚や知人が持参するものです。一方、お布施は僧侶に対して感謝の気持ちを表し、読経や供養などをお願いする際に包むものです。
墓じまいにおいては、読経を依頼する場合にお布施を渡します。額は地域や宗派によりますが、3万円から5万円程度が相場とされています。また、墓じまいは身内だけで行うことも多いため、香典は必ずしも必要ではありません。しかし、親戚が参列する場合や、僧侶以外にも世話になった方がいる場合には、香典や御礼として金銭を包むケースもあります。
つまり、香典は「弔意」、お布施は「感謝」という役割で使い分けることが大切です。それぞれの目的を理解し、適切な対応を心がけることで、後々の親戚間トラブルも避けることができるでしょう。
親戚に包むお金は必須?地域や慣習で異なる実情
「親戚にお金を包む必要があるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。実際のところ、これは地域の習慣や親族間の関係性によって異なるのが実情です。都市部では簡素に済ませるケースもありますが、地方では昔ながらのしきたりが根強く残っており、親戚間でお金を包み合うことが一般的な場合もあります。
例えば、地方によっては「墓じまい=改葬法要」と同じように扱われるため、法要後に会食を設けることもあります。この際、親戚から香典を受け取る一方で、施主側は御膳料や御車代を用意するといった形で互いに負担し合うケースが見られます。
一方で、親族の間柄が近しい場合や、「身内のことだからお金のやり取りは不要」と考えるケースもあります。このように、お金を包むことが必須かどうかは一概には言えません。不安な場合は、近しい親戚に事前に相談することで、地域や家の慣習に沿った対応ができ、トラブルを未然に防ぐことができます。
墓じまいで包むお金の種類と相場
墓じまいでは、僧侶への謝礼や親戚への心遣いとして、さまざまなお金を包む場面があります。それぞれに役割があり、相場も異なるため、事前に確認しておくことが大切です。以下では、香典、お布施、御車代、御膳料といった代表的なお金について解説します。
どれも義務ではありませんが、故人や先祖を思う気持ちを表すものです。包むことで、親戚間のわだかまりやトラブルを避ける効果もあります。金額に悩んだときは、周囲や石材店、寺院に相談すると、地域に合った相場を教えてもらえるでしょう。
香典はいくら包むべきか?親戚間での一般的な金額
墓じまいで香典を包むかどうかは地域や家の慣習によります。法事や葬儀とは異なるため、省略することもありますが、親戚が集まる場面では「お互い様」という気持ちから香典を持参するケースも少なくありません。
一般的な相場は3,000円~1万円程度です。親族の関係が深ければ1万円、付き合いが浅ければ3,000円~5,000円が目安になります。兄弟姉妹で一律に決めるケースもあります。
表書きは、「御香典」「御仏前」「御供物料」などが使われます。水引は「黒白」や「黄白」が一般的です。ただし、「墓じまいはお祝いごと」と捉える地域では、紅白の水引を使うこともありますので注意しましょう。
お布施の相場はどのくらい?閉眼供養・読経料など
墓じまいでは、閉眼供養や読経を依頼する際に僧侶へ「お布施」を渡します。お布施は僧侶への感謝の気持ちを表すもので、定額ではありません。しかし、一般的には3万円~5万円程度が目安とされています。
地域や宗派、寺院によって差があるため、不安な場合は事前に問い合わせて確認しておくと安心です。また、菩提寺がある場合は、檀家として長年お世話になっているため、相場よりも少し多めに包む方もいます。
表書きには、「御布施」と記載し、白無地の封筒または蓮の花が描かれた封筒を用います。水引は不要です。さらに、遠方から来ていただく場合は「御車代」、法要後に会食を行わない場合は「御膳料」を別途包むのが丁寧です。
御車代や御膳料も必要?追加でかかる費用の目安
墓じまいでは、お布施以外にも御車代や御膳料を包むケースがあります。必須ではありませんが、遠方から来る僧侶や親戚に対して、交通費や食事代として渡すのが一般的です。
御車代は5,000円~1万円程度が目安です。タクシー代やガソリン代を想定し、寺院に距離を確認して決めるとよいでしょう。表書きは「御車代」とし、白封筒に包みます。
御膳料は5,000円~1万円程度が相場です。法要後に会食を設けない場合、僧侶に食事代として渡します。「御膳料」と表書きし、白封筒に入れます。お布施とまとめて渡しても失礼には当たりませんが、分けて包むとより丁寧な印象になります。
これらのお金は、「必ずしも必要ではないが、気遣いとして渡すと喜ばれる」という位置づけです。地域によって習慣が異なるため、親戚や寺院に確認しながら準備すると安心です。
親戚間での墓じまい費用負担の考え方
墓じまいには、墓石撤去費用や閉眼供養のお布施、改葬先の費用など、想像以上に大きな出費がかかるケースがあります。この負担を誰がどのように分担するかは、親戚間でしっかりと話し合って決める必要があります。お金に関する問題は、後々の人間関係にも影響を与えかねません。スムーズに進めるためにも、施主だけで抱え込まず、親族全員で理解を深めながら進めることが大切です。
親族一人ひとりの経済状況や立場は異なるため、必ずしも均等に負担する必要はありません。大切なのは、互いの事情を尊重しながら、納得できる形で協力し合うことです。
費用は誰が払うべき?施主と親族間の負担割合
墓じまいの費用負担について最も悩まれるのが、「誰がどれだけ払うべきか」という問題です。一般的には、墓を守ってきた施主(墓の名義人や長男)が中心となって負担するケースが多いです。しかし、近年では「兄弟で分担する」「親戚で話し合って均等に出し合う」といった方法を取る家庭も増えています。
具体的には、次のような分担例があります。
- 施主が全額負担:今後も法要などを引き継ぐ責任が施主にある場合
- 兄弟で均等負担:親族全員で供養してきたとの意識が強い場合
- 親族間で相談して負担割合を決定:経済状況や関係性を考慮しながら柔軟に決める
正解は一つではありません。各家庭の事情によって異なるため、事前に親戚間で十分に話し合うことが何よりも大切です。
兄弟や親戚との話し合いで揉めないためのコツ
墓じまいに関する費用分担の話し合いは、どうしてもデリケートな話題になります。場合によっては、「なぜうちが多く払わなければならないのか」「昔から〇〇家が管理していたはずだ」といった感情的な対立を招くこともあります。
揉めないためには、以下のような工夫が役立ちます。
- できるだけ早い段階で声をかける:「突然、費用を出してほしい」と言われると反発を招きやすいため、墓じまいを考え始めた時点で親戚に相談する姿勢を示しておく。
- 負担額の目安を具体的に提示する:業者の見積もりなどを用意し、「総額で〇〇万円かかりそうなので、〇人で分担すると1人△△万円」と具体的に伝えると理解が得やすい。
- 感謝の気持ちを忘れずに:「ご協力いただけると助かります」「無理のない範囲で結構です」といった柔らかな言葉を添えることで、相手も協力しやすくなる。
話し合いでは、意見が食い違うこともあります。しかし、目的はあくまで「故人を丁寧に供養すること」です。その原点を忘れず、冷静に進めることが重要です。
親戚に負担をお願いする際の伝え方と注意点
墓じまいにかかる費用の一部を親戚にお願いする場合は、伝え方にも細心の注意を払う必要があります。「お金を出して当然」といった態度を取ると、関係が悪化しかねません。以下の点に気を付けましょう。
- 一方的に押し付けない:「この額を出してほしい」と強制するような言い方は避ける。
- 事情を正直に説明する:「墓じまいに思った以上に費用がかかり、1人では負担しきれないため相談させてほしい」と事情を素直に伝える。
- 無理を強要しない:「もし難しいようなら遠慮なくおっしゃってください」と、相手の状況にも配慮する姿勢を見せる。
- 金額に見合った感謝の表し方:例えば、「お供え物を届ける」「法要後にきちんとお礼状を出す」など、金銭負担に対して誠意を示す。
人によっては、「お金の話を持ち出された」と感じることもあります。そのため、「協力をお願いする」という姿勢で、相手を尊重しながら話すことが、円満に進めるカギとなるでしょう。
墓じまいに関する親戚トラブルを防ぐ方法
墓じまいを進める際に、特に注意しなければならないのが親戚間でのお金に関するトラブルです。費用負担や手続きの分担、供養の考え方など、人それぞれ意見が異なるため、話し合いがこじれて関係にひびが入るケースも少なくありません。
「言いづらいから」「自分が負担すればいいか」と安易に考えると、後から「勝手に進めた」「自分も関わりたかった」と不満を招く原因になります。円満に進めるためには、親戚一人ひとりの立場や気持ちに配慮しながら進めることが何よりも大切です。
お金の話で揉めやすいケースと対策
墓じまいで親戚間でもめる原因の多くは、お金に関する不公平感から生じます。以下のようなケースは特に注意が必要です。
- 「施主だけが負担している」と後から不満が出る
- 「一部の親族だけ多く払わされている」と感じる人が出る
- 「勝手に進めた」と費用負担以外でも反感を買う
これらを防ぐには、初めから費用負担や進め方をオープンにすることが重要です。
具体的な対策としては、次の3点が挙げられます。
- 見積もり段階で費用の概算を伝え、分担について相談する
- 兄弟や親族で費用分担を決める際は「均等」だけでなく、経済状況に応じた柔軟な分け方を提案する
- 手続きの進捗もこまめに報告し、「事後報告」ではなく「相談しながら進めている」という姿勢を見せる
「少しでも出してもらえると助かる」という柔らかい言葉を添え、無理に強要しないことも大切です。
親戚に理解を得るための説明の仕方
墓じまいをする理由は、人それぞれ事情があります。「お墓を守る人がいなくなった」「お参りに行くのが難しい」など、やむを得ない事情であっても、親戚の中には「墓を片付けるなんて…」と否定的に感じる人もいます。
反発を招かないためには、誠意を持って丁寧に説明することが不可欠です。
説明時には、以下のような流れを意識すると伝わりやすくなります。
- 現状の問題点を共有する:「遠方で管理が難しい」「お墓の老朽化が進んでいる」など具体的に説明する
- 墓じまいを考えた背景を伝える:「先々困らないように、今のうちに整理したい」という前向きな理由を添える
- 親族にも相談したい旨を伝える:「皆さんにも相談しながら進めたいので、ご意見を聞かせてほしい」と協力を求める姿勢を示す
一方的に「墓じまいをする」と決めつけるのではなく、あくまで『相談』という形で伝えることで、親戚も自分ごととして考えやすくなります。
事前相談で円満に進めるために準備すべきこと
墓じまいを円滑に進めるには、事前準備が何よりも重要です。親戚に相談する前に、次の3点を整理しておくとスムーズに話を進めることができます。
- お墓の現状確認:墓地管理者に相談し、墓じまいに必要な手続きや費用の概算を把握しておく
- 改葬先の候補を調べておく:永代供養墓や納骨堂など、遺骨の受け入れ先をいくつか検討しておく
- 費用見積もりを取っておく:石材店などに問い合わせ、墓石撤去費用や供養費用の相場を確認しておく
これらを用意した上で、親戚に「現状こういう状況で、こんな方法が考えられる」と説明すると、感情論にならず、冷静に話し合いを進めやすくなります。
墓じまいは、ただお墓を片付けるだけではなく、親族間の関係も整理し直す機会です。事前相談を丁寧に行うことで、後々のトラブルを防ぎ、円満に供養を終えることにつながるでしょう。
まとめ

墓じまいに関する親戚へのお金の問題は、事前にきちんと理解し準備しておくことで、円満に解決できます。香典やお布施、費用分担などで戸惑うこともあるかもしれませんが、相手の気持ちを思いやり、丁寧に相談しながら進めることが何より大切です。墓じまいは、故人を偲び、家族や親戚との絆を見つめ直す機会でもあります。この記事を参考にして、無理なく納得のいく墓じまいを進めていただければ幸いです。
墓じまいで親戚に包むお金に関するQ&A
墓じまいでは、僧侶へのお布施や親戚への香典、御車代など、さまざまなお金を包む場面があります。しかし、「いくら包むべきか」「親戚同士で金額が違ってもいいのか」といった疑問や、「辞退された場合どうすれば?」といった悩みを抱える人も少なくありません。
お金に関する不安を解消し、親戚関係を円満に保つためには、事前に疑問点をクリアにしておくことが大切です。ここでは、墓じまいに関するお金のやり取りについて、よくある疑問とその対応策を解説します。
親戚によって包む金額が違っても問題ない?
墓じまいでは、親戚それぞれの事情によって包む金額に差が出ることもあります。結論から言えば、金額が異なっても問題ありません。
例えば、年金生活をしている親戚と、現役世代で収入が安定している親戚とでは、包める金額に差があるのは当然です。そのため、大切なのは「額の大小よりも気持ち」です。施主側も、「無理のない範囲でお願いします」と柔軟な姿勢を示しておくことで、親戚も包みやすくなります。
ただし、親戚同士で「自分は多く出したのに」「あの人は少ない」と不満が出ることもあります。このような事態を防ぐためには、あえて金額を公表せず、各自が出せる範囲で包んでもらう形にするとスムーズです。
香典とお布施、両方包む必要はある?
墓じまいでは、「香典」と「お布施」が混同されがちですが、役割が異なります。本来、香典は参列者が持参するもので、お布施は僧侶へ感謝の気持ちを表して施主が渡すものです。
したがって、墓じまいに参列する親戚が香典を持参し、施主が僧侶へお布施を渡す、という両方が必要になる場合もあります。しかし、必ずしも両方必要というわけではなく、家族だけで簡素に済ませる場合や、僧侶を呼ばない場合は不要です。
不安であれば、親戚に事前に「香典は不要です」と一言伝えておくと、持参する側も迷わずに済みます。
親戚からお金を受け取った後のお礼はどうする?
墓じまいで香典や費用分担をしてもらった場合、お礼を丁寧に伝えることが大切です。
最も一般的なのは、当日や後日「お礼状」を送る方法です。簡潔でも良いので、「無事に墓じまいを終えることができました。ご協力に感謝いたします」といった内容を手紙で伝えると気持ちが伝わります。
加えて、お菓子や品物などの「お返し」を贈るケースもあります。金額の3割〜5割程度の品物を選ぶのが目安です。「香典返し」として品物を渡すと堅苦しくなる場合は、「ご挨拶の品」として、さりげなく菓子折りなどを送ると好印象です。
親戚が「お金はいらない」と言った場合はどう対応する?
墓じまいに際して、親戚から「うちはお金はいらないよ」と言われることもあります。その場合は、無理に受け取ってもらう必要はありません。
ただし、「本当に迷惑をかけたくない」と思っていても、後々「気を使わせたかな…」と感じることもあるため、負担が少ない形で感謝を伝えるのがおすすめです。
例えば、「香典は結構です」と言われた場合でも、当日のお茶代や軽い手土産を用意する、「遠方から来てもらったので御車代だけは受け取ってほしい」と伝えるなど、相手に配慮しつつ感謝の気持ちを形にすると、角が立たずスムーズです。
墓じまい後に親戚付き合いを円滑にするための配慮とは?
墓じまいが無事に終わっても、それで親戚付き合いが終わるわけではありません。むしろ、「お墓がなくなったから疎遠になる」というケースもあります。
そこで大切なのが、墓じまい後も定期的に連絡を取り合うことです。法事やお彼岸に限らず、年賀状や暑中見舞いなどで「その後、皆さんお変わりありませんか」と一言添えるだけでも、親戚付き合いは続きます。
また、墓じまい後に「永代供養」や「合同墓」に移した場合、その後の供養の状況について簡単に報告するのも良い方法です。「先日、お参りに行ってきました」など近況を知らせることで、親戚も安心し、関係が円滑に続きやすくなります。