亡くなった人を偲ぶ場として葬儀は、人生の節目として避けては通れない儀式です。その中でも「香典返し」は、葬儀の大切な要素の一つです。
しかし、香典返しについて具体的に何をすれば良いのか、どのような品物を選べば良いのか、いつ渡すべきなのか、香典返しのマナー、宗教宗派別の違い、香典返しの金額相場など、多くの方が疑問を持っていることでしょう。
この記事では、「香典返し」のあれこれについて詳しく解説します。具体的な相場やマナー、贈るタイミング、おすすめの品物、購入方法など解説しますので、香典返しについてぜひご参考ください。
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香典返しとは
香典返しとは、お通夜や告別式など葬儀に参列し、香典として金品を供えた方々に対するお礼の意味を込めた贈り物です。葬儀を行う側が、香典を供えてくれた人々の心遣いに対し、感謝の意を示す大切な儀礼の一部です。
香典返しの由来
香典返しは日本独特の文化で、その由来は古くから続く礼儀作法に根ざしています。葬儀に参列する人々が香典として金品を供えると、それに対して故人の家族は感謝の意を示すために贈り物をします。これが香典返しの始まりとされています。
香典返しの意味
香典返しは、故人を偲ぶ葬儀に参列し、香典を供えてくださった方々への感謝の意を示すためのものです。また、弔事(四十九日法要まで)を滞りなく終えたという意味も含まれています。
香典返しの相場
香典返しの相場は、頂いた金額から選ぶのが一般的です。通常、香典の額の半額程度が目安とされていますが、地域や状況により異なるため、適切な相場を把握することが大切です。
頂いた金額から贈り物を選ぶ
香典返しの金額は、頂いた金額の「半返し(半額)」が習慣となっていますが、半返しでは多すぎるという意見もあり、半返し~3分の1返しが一般的になっています。
香典の額 | 半返し | 3分の1返し |
5,000円 | 2,500円 | 1,667円 |
10,000円 | 5,000円 | 3,333円 |
30,000円 | 15,000円 | 10,000円 |
50,000円 | 25,000円 | 16,667円 |
100,000円 | 50,000円 | 33,333円 |
香典返しを贈る時期
香典返しを贈る時期は宗教・宗派によって異なりますが、一般的には30日~50日に贈ります。仏式であれば49日経過後の忌明けから贈ります。
宗教・宗派別の贈る時期
仏式:49日後(七七日忌)、35日後(五七日忌)
神式:50日後(五十日祭)
キリスト教:1ヶ月後(プロテスタント 昇天記念日)、30日後(カトリック 追悼ミサ)
香典返しで人気の品物
香典返しに適している品物としては、カタログギフトや消え物が人気です。
カタログギフト
カタログギフトの魅力は、受け取った人が自由に商品を選べることです。商品カタログの中から自分の好みに合った商品を選ぶことができ、商品の受け取りのタイミングも自由に選ぶことができるため、忙しい人やスケジュールが合わない人にも便利です。
消え物
「不祝儀を残さない」という考えから、後に残らない「消え物」と呼ばれるお茶・海苔・お菓子などの食べ物や洗剤・タオルなどの消耗品が人気です。
香典返しでタブーな品物
生鮮食品や慶事に使う品、現金や金券・商品券は香典返しには向いていません。これらは生命力や喜びを象徴するものであり、悲しみの中にある葬儀とは相応しくありません。
生鮮食品
「四つ足生臭もの」と呼ばれる四足歩行する動物の肉や生魚は、香典返しにはタブーとされています。
慶事に使う品
慶事(お祝いや吉事、めでたいこと)で使用する「昆布」「かつおぶし」「酒」はよくありません。地域の慣習によっては問題ない場合もあります。
現金や金券・商品券
現金や金券・商品券など金額がはっきりと分かるものは、頂いた現金を現金で返すようなことなので、あまりよくありません。ただし、相手にとって不要なものを贈るよりは金券や商品券を贈ったほうがいい場合もあります。
会葬御礼と香典返しの違い
会葬御礼と香典返しの違いは、会葬御礼は「葬儀や告別式に参列してくれた人々への感謝の意を示すもの」で、香典返しは「香典を供えてくれた人々への感謝の意を示すもの」です。
香典返しを当日返し(即返し)で行う場合、会葬御礼と香典返しの両方を一緒にお渡しします。
会葬御礼には、ハンカチや海苔など500~1,000円の品物と清めの塩に挨拶状を同封してお渡しします。
香典返しの掛け紙・表書き
香典返しには、掛け紙と表書きがあります。掛け紙は、香典返しを包む紙で、様々な種類があります。表書きは、相手に対する敬意を示す言葉で、用途や相手によって適切な表現を選びます。
掛け紙とは
熨斗(のし)がないものを「掛け紙」といい、熨斗があるものを「のし紙」といいます。のし紙は結婚や出産祝いなどの慶事のときに使用します。
香典返しは弔事になるので、熨斗のない掛け紙を使用します。
掛け紙の種類
仏事で使用される掛け紙は「黒白結び切り」が一般的です。仏式では蓮柄の入った黒白結び切りや、西日本や北陸などの一部地域では、黄白結び切りを使用する所もあります。
結び切りは「本結び」とも呼ばれ、一度結んだら引っ張っても解けないような結び方から、この言葉には「二度と繰り返さない」という意味が込められています。仏事だけでなく、結婚式やお見舞いなど、繰り返すことが好ましくない場面でも使われます。
表書きの種類
掛け紙に書かれる表書きは、宗教や地域の習慣によって異なることがあります。
香典返しの場合、一般的には「志」と書かれます。ただし、神式やキリスト教式などで香典という概念がない場合は、故人を偲び、追慕する気持ちを表すために「偲び草」と書かれることもあります。関西や西日本の一部地域では「満中陰志」と書くこともありますし、中国・四国・九州地方の一部地域では「茶の子」と書く所もあります。
表書きの種類
志:宗教宗派や地域関係なし
偲び草:神式、キリスト教
満中陰志:関西~西日本の一部地域
茶の子:中国・四国・九州地方の一部地域
表書きに何と書くかについては、身内や親族の方に相談しましょう。迷った場合は、一般的な「志」と書くことでも問題ありません。
香典返しの挨拶状・お礼状の書き方
香典返しには、挨拶状やお礼状を同封することが一般的です。句読点は使用せず、忌み言葉・重ね言葉は避けます。具体的な例文を参考に、相手を尊重し感謝の気持ちを表現します。
句読点は使用しない
挨拶状やお礼状には「。」「、」の句読点を使用しないことが望ましいとされています。
これは「句読点には区切りという意味があり、法要が滞りなく済んだことを伝えるには適さない」「毛筆で書く書状には句読点を使用する習慣がない」といった由来があります。
忌み言葉は使用しない
忌み言葉とは、「不幸・不吉なことを連想させる言葉」のことです。「四」「死」「九」「ご生在中」「苦しむ」「追って」といった忌み言葉は避けましょう。
重ね言葉は使用しない
重ね言葉は、「繰り返し起こることを連想させる言葉」のことです。「またまた」「度々」「重ね重ね」「ますます」「再三」といった重ね言葉は避けましょう。
挨拶状・お礼状の例文
滞りなく法要が済んだことや感謝の気持ちを伝える挨拶状には、宗教宗派などによって書き方が異なります。
香典返しを注文できるショップのほとんどでは、挨拶状・お礼状は用意されているので、1から挨拶状を考えて作成する必要はありません。
「ご自身で香典返し用の品を見つけて購入し、挨拶状を1から作成して印刷する」といった方でなければ、挨拶状はショップに任せることをおすすめします。
後返しと当日返し(即返し)の違い
後返しは、法要が終わった後に香典返しを贈る方法で、時間をかけて丁寧に準備できる反面、手間とコストがかかります。一方、当日返しは、葬儀当日に香典返しを渡す方法で、手間が省ける反面、準備に余裕が必要となります。
後返しのメリット・デメリット
後返しは、法要を終えた後に香典返しを行う一般的な方法です。仏式であれば七七日忌(49日後)に香典返しを贈ります。
頂いた香典額を確認した上で、半返しといった適切な香典返しを行えます。また、相手にあった香典返しを選ぶ時間や余裕もあります。
ただし、葬儀後のやらなければならないことや手続きなど多く残っている中で、香典返しも準備しなければならないので、当日返しを選択する方も増えています。
当日返し(即返し)のメリット・デメリット
当日返し(即返し)は、葬儀当日に香典返しを行う方法です。ご親族や参列者が遠方に住んでいる場合、葬儀のみ参列して法要には参列できないこともあるので、葬儀当日に香典返しをする当日返しが定着してきています。
当日返しの場合、おおよその参列者数に合わせて同じ品物を用意し、お通夜や葬儀の際に手渡しできるので、手間が軽減できます。
ただし、香典額を確認せずに香典返しを渡すので、高額な香典を頂いていた場合には、追加で香典返しの品物を贈る必要があります。
香典返しを辞退された場合の対応
香典返しの受け取りを辞退された場合はお礼状のみ送ることもあります。また、一部の宗派では香典返しを行わないこともありますので、具体的な宗派の教えを確認することが重要です。
香典返しを辞退される理由
香典返しを辞退される理由は「遺族の負担を軽減するため」「会社・勤務先の規定で決められているため」「香典が少額なため」「連名(複数人)での香典のため」といった理由が考えられます。
ただし、香典返しの辞退をされていないのに「少額だから」といった理由で香典返しの贈らないのはマナー違反ですので、気をつけましょう。
香典返しの受け取りを辞退された場合の対応
香典返しの受け取りを辞退された方には、挨拶状(お礼状)のみ贈ります。挨拶状には「香典返しを辞退してもらったことへのお礼」を書くといいでしょう。
会社・法人(社葬や団体葬)からの香典に対する対応
会社・法人からの香典に対しては、会社名義(法人名義)か個人名義かによって香典返しをするかどうか判断します。
会社からの香典の場合、会社の福利厚生費の扱いで慶弔費から香典を出していることも多く、その場合の香典返しは「不要」です。ただし、会社名と社長名での香典の場合など、福利厚生費かどうか分からない場合には、総務部など会社の担当部署に確認しましょう。
福利厚生費からではなく、同僚や上司から個人名義で香典を頂いた場合は、香典返しが「必要」です。「社員一同」といった連名での香典の場合、香典額を人数で割った金額を踏まえて香典返しを行いましょう。
家族葬での香典返し
家族葬では「香典を受け取らない」というケースが多いです。家族葬はご親族や親しい友人のみ参列する葬儀形式なので、遺族の負担を減らすために香典や供花を辞退する傾向にあります。
事前に香典の辞退を伝えていた場合でも、香典を持参してくださった方がいた場合には、金額に応じて香典返しをするのがマナーです。
香典返しのマナーや宗教ごとの違い
香典返しのマナーは地域や宗教によって異なる場合があります。特に宗教によっては、香典返しを行わない、または特定の形式で行うといった独自の規定があることもあります。
確認が必要なマナー
- 香典返しのタイミング
- 金額の相場
- 掛け紙
- 表書き
- 挨拶状(お礼状)
- 品物選び
- 当日返し(即返し)
- 会社への香典返し
など
記事内で書くマナーについて解説していますので、再度ご参考いただければと思います。
香典返しの注文・購入方法
香典返しは通販サイト、専門店・デパート、葬儀社から購入可能です。それぞれメリット・デメリットがありますので、ご自身の状況に最適なところで購入しましょう。
通販サイト(ネットショップ)で注文
最も簡単かつ安価に香典返しを用意する方法は、通販サイト(ネットショップ)で注文する方法です。
深夜早朝や休日など好きなときに品物を選べて、直接相手先に発送できるので、オンライン上で発送まで完結できます。通販サイトには、宗教宗派ごとの掛け紙や挨拶状のテンプレートが予め用意されているので、スムーズに手配できます。
ただし、注文から発送まで全てオンライン上で完結するので、実際の品物を確認できません。実際に品物を目で見たい場合には、専門店やデパートでの購入をおすすめします。
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専門店・デパートで購入
専門店やデパートで購入する方法があります。これらの場所では、多くの種類の香典返しが取り揃えられていて、スタッフから直接アドバイスを受けることができます。しかし、準備や選択に時間がかかることが欠点となることもあります。
葬儀社に用意してもらう
香典返しを葬儀社に用意してもらう方法もあります。依頼する葬儀社に任せることで、ご自身で注文して用意する手間なく、香典返しを準備できます。ただし、ご自身で購入する場合と比べて、金額が高くなってしまう(品物が安価なものになってしまう)場合もあるので注意が必要です。
香典返しのよくある質問
香典返しの相場は?
香典返しの相場は、頂いた香典額の半返し~3分の1返しが一般的です。10,000円の香典を頂いた場合、3,000~5,000円程度の香典返しになります。
香典返しはいつ贈る?
香典返しには「無事に法要が済みました」との意味も込められています。香典返しのタイミングは宗教宗派によって異なりますが、仏式であれば49日以降に贈るのが一般的です。
香典返しに適した品物は?
香典返しの品物には、カタログギフトやお茶・海苔・お菓子などの食品、洗剤・タオルなどの消耗品が人気です。反対に、生鮮食品や慶事に使う品、現金や金券・商品券は香典返しには向いていません。
どこで香典返しを購入できる?
香典返しは通販サイト、専門店・デパート、葬儀社から購入可能です。注文から発送までオンライン上で完結できる通販サイトでの購入が最も簡単かつ安価です。
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