大切な方を亡くされた深い悲しみの中、すぐに「死亡届」の手続きを進めなければならず、戸惑いや不安を感じていらっしゃるかもしれません。普段馴染みのない書類のため、どこに何を書けば良いのか、いつまでにどこへ提出すれば良いのか分からず、お困りの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、死亡届の具体的な書き方を見本と共に解説し、提出方法から必要な持ち物、注意点までを網羅的にご紹介します。この記事を読めば、手続き全体の流れが明確になり、落ち着いて故人様を見送るための準備を進めることができます。
死亡届とは?提出までの手続きの流れ

死亡届は、故人様の火葬や埋葬を行うために法律で定められた、非常に重要な公的書類です。この届出が受理されることで、故人様が戸籍から除籍され、社会的な手続きが完了します。火葬やその後の手続きに不可欠なものだと覚えておきましょう。
この届出を提出しなければ、火葬や埋葬を行うために必要な「火葬許可証」が交付されません。つまり、故人様とのお別れの儀式を進めるための第一歩となるのが、この死亡届の提出なのです。落ち着いて、かつ確実な手続きが求められます。
火葬許可に不可欠な死亡届の役割
死亡届の最も重要な役割は、故人が亡くなったという事実を法的に証明することです。この届出が受理されると、故人様の戸籍や住民票に死亡の事実が記載され、公的な記録が更新されます。相続や年金などの手続きにも関連する重要な書類です。
そして、この届出と引き換えに「火葬許可証」が発行されます。この許可証がなければ、火葬場で故人様の火葬を行うことができません。葬儀を滞りなく進めるためにも、死亡届の提出は迅速に行う必要があります。
訃報から火葬許可証受領までの手順
ご逝去から火葬許可証を受け取るまでには、決まった手順があります。全体の流れを把握しておくことで、慌てずに各段階の手続きを進めることができます。特に葬儀社と連携することで、より円滑に進めることが可能になります。
具体的な手順は以下の通りです。医師から死亡診断書(死亡届)を受け取ることが、すべての手続きの始まりとなります。
- 1. 病院等で医師から死亡診断書(死亡届と一体)を受け取る
- 2. 死亡届の届出人欄などに必要事項を記入・押印する
- 3. 市区町村役場に死亡届を提出する
- 4. 役所で火葬許可証を受け取る
【見本あり】死亡届の書き方を徹底解説

死亡届の記入は、見慣れない項目が多く戸惑うかもしれませんが、一つひとつの項目を確認しながら進めれば、決して難しいものではありません。多くの場合、用紙の右半分に記載された医師による「死亡診断書」の内容を参考に記入します。
氏名や本籍地、死亡した日時や場所など、故人様に関する情報を正確に転記することが基本です。もし書き方を間違えても訂正は可能なので、焦らず丁寧に記入することを心がけましょう。ここでは見本を参考に、具体的な書き方を解説します。
死亡診断書と死亡届は一体の書類です
死亡届の用紙は、通常A3サイズで、左側が家族などが記入する「死亡届」、右側が医師が作成する「死亡診断書(または死体検案書)」となっています。これらは一つの書類として扱われ、提出時に切り離してはいけません。
病院で受け取る際には、この形式になっているかを確認しましょう。記入する際は、まず右側の死亡診断書に記載された故人様の情報や死亡日時・場所などをよく確認してください。その情報を基に、左側の死亡届を埋めていきます。
故人の情報の正しい記入方法と注意点
故人様の情報を記入する際は、死亡診断書の内容を正確に転記することが最も重要です。特に氏名の漢字や生年月日など、戸籍情報と一致している必要があります。もし戸籍上の文字が旧字体の場合は、その通りに記入しましょう。
主な記入項目と注意点は以下の通りです。特に死亡時刻は、午前・午後ではなく24時間表記で記入する必要があるなど、細かなルールに注意してください。
| 記入項目 | 書き方のポイント・注意点 |
|---|---|
| 氏名・生年月日 | 戸籍に記載されている通りの正確な漢字・年月日で記入します。 |
| 死亡したとき・ところ | 死亡診断書に記載されている日時(24時間表記)と場所をそのまま転記します。 |
| 住所・世帯主の氏名 | 住民票に登録されている住所と世帯主名を記入します。 |
| 本籍 | 戸籍謄本や住民票で確認した正確な本籍地(番地まで)を記入します。 |
| 死亡した人の職業・産業 | 国勢調査の年のみ記入が求められます。不明な場合は空欄でも問題ありません。 |
届出人になれる人と届出人欄の書き方
死亡届の「届出人」として署名・押印できる人は、法律で定められています。故人の親族(配偶者、子、父母、兄弟姉妹など)のほか、同居者や家主、後見人などが該当します。誰が届出人になるか、事前に家族で話し合っておくとスムーズです。
届出人欄には、ご自身の住所・本籍地を記入し、署名の上で押印します。故人との関係性を示す欄では、「妻」「長男」など、具体的な続柄を記入してください。この欄は、代理人が提出する場合でも、必ず届出人本人が署名する必要があります。
故人の本籍がわからない場合の調べ方
死亡届の記入でつまずきやすいのが「本籍地」です。故人様の本籍がわからない場合、まずは故人の運転免許証を確認してみましょう。ICチップ搭載の免許証であれば、本籍地が記録されている場合があります。
それでも不明な場合は、故人様が最後に住民登録をしていた市区町村役場で「本籍地記載の住民票の除票」を取得することで確認できます。本籍地の記載は必須項目のため、不明な場合は早めに調べておきましょう。
書き損じた場合の正しい訂正方法
万が一、死亡届の記入内容を間違えてしまった場合、修正液や修正テープは絶対に使用しないでください。公文書であるため、定められた方法で訂正する必要があります。間違えたからといって、新しい用紙に書き直す必要はありません。
正しい訂正方法は、まず間違えた箇所を二重線で消します。そして、その近くの余白に正しい内容を記入し、訂正箇所に届出人の印鑑(届出人欄に押したものと同じ印鑑)を押してください。これで訂正が完了します。
死亡届の提出方法と必要な持ち物

死亡届の記入が完了したら、次は市区町村役場への提出です。手続きを円滑に進めるためには、提出期限や提出先、必要な持ち物を事前に正確に把握しておくことが非常に大切になります。不備があると手続きが遅れてしまう可能性もあります。
提出期限は「死亡の事実を知った日から7日以内」と定められています。故人の本籍地や死亡地、届出人の所在地のいずれかの役所に、必要な書類と印鑑を持参して提出しましょう。葬儀社による代行も可能です。
提出期限はいつまで?死亡を知った日から7日以内
死亡届の提出期限は、戸籍法によって「死亡の事実を知った日から7日以内」と厳密に定められています。この「知った日」が1日目としてカウントされます。例えば、月曜日にご逝去の連絡を受けた場合、翌週の月曜日が提出期限となります。
なお、国外で亡くなった場合は、その事実を知った日から3ヶ月以内が期限です。期限を過ぎると理由によっては過料が科される場合があるため、速やかに手続きを進めましょう。やむを得ない事情がある場合は、役所の窓口で相談してください。
どこに提出する?3つの提出先の選び方
死亡届は、どの市区町村役場でも提出できるわけではありません。法律で定められた以下の3つのいずれかの役所の戸籍担当窓口に提出する必要があります。ご自身の都合や、その後の手続きの利便性を考えて選ぶと良いでしょう。
届出人の所在地(住民票のある場所)の役所でも提出できるため、遠方に住む親族が亡くなった場合でも対応が可能です。
- 故人の本籍地
- 故人が死亡した場所(病院や施設の所在地)
- 届出人の所在地(住民票のある市区町村)
誰が提出できる?届出人になれる人の条件
死亡届の「届出人」として署名できるのは、親族や同居者など法律で定められた人に限られます。しかし、実際に役所の窓口へ書類を持参し提出する「提出者」は、届出人本人でなくても構いません。代理人による提出が認められています。
例えば、長男が届出人として署名し、葬儀社のスタッフが代理で役所に提出することが可能です。ただし、届出人欄の署名・押印は必ず届出人本人が行う必要があり、代理人が代筆することはできません。
提出時に必要な書類と印鑑について
死亡届を役所に提出する際には、記入済みの届書のほかに、いくつか持参すべきものがあります。忘れ物をすると二度手間になってしまうため、事前にしっかりと確認し、準備しておきましょう。特に印鑑は訂正に必要になる場合があります。
最低限必要なのは届書と届出人の印鑑です。印鑑は実印でなくても認印で問題ありませんが、インク浸透印(シャチハタなど)は不可とされています。
- 死亡届(死亡診断書または死体検案書が添付されたもの)
- 届出人の印鑑(認印で可、シャチハタは不可)
- 届出人の本人確認書類(運転免許証など、念のため持参すると安心です)
葬儀社による提出代行も可能です
ご遺族は、悲しみの中で多くの手続きや準備に追われ、心身ともに大きな負担がかかります。そのような状況で役所へ出向くのが難しい場合、葬儀社に死亡届の提出を代行してもらうという選択肢があります。
多くの葬儀社が、一連の葬儀サービスの一環として、この提出代行を無料または実費のみで引き受けてくれます。手続きに不安がある方や時間に余裕がない方は、葬儀社の担当者に相談してみることをお勧めします。
死亡届を提出した後の注意点

死亡届を無事に提出し、受理された後も、安心してはいけません。その場で必ず行わなければならない重要な手続きが残っています。これを忘れてしまうと、その後の火葬や各種手続きに支障をきたす可能性があるため、注意が必要です。
具体的には「火葬・埋葬許可証」の受け取りと、提出する死亡届の「コピー」を保管することです。特に火葬許可証は、故人様とのお別れに不可欠な書類ですので、絶対に忘れないようにしましょう。
火葬・埋葬許可証の受け取りを忘れずに
死亡届が役所で正式に受理されると、その場で「火葬許可証(埋葬の場合は埋葬許可証)」が交付されます。この書類は、火葬場で火葬を行う際に提出が義務付けられている、非常に重要なものです。
これがないと、いかなる理由があっても火葬は許可されません。役所の窓口を離れる前に、必ず火葬許可証を受け取ったかを確認し、紛失しないよう葬儀社の担当者などに預けるか、大切に保管してください。
後の手続きのためにコピーを保管しましょう
一度役所に提出した死亡届の原本は、返却されることはありません。しかし、生命保険の請求や遺族年金の手続きなど、後の様々な場面で死亡の事実を証明する書類として、死亡届の写し(コピー)が必要になることがあります。
そのため、役所に提出する前に、必ずコンビニなどで複数枚コピーを取っておくことを強くお勧めします。後から「死亡届記載事項証明書」を役所で取得することもできますが、費用と手間がかかるため、事前のコピーが賢明です。
まとめ:死亡届は慌てず確実に手続きしよう

大切な方を亡くされた直後に行う死亡届の手続きは、精神的な負担が大きい中で、正確性が求められる大変な作業です。しかし、書き方のポイントや提出の流れを事前に理解しておくことで、戸惑いは大きく軽減されるはずです。
この記事で解説した内容を参考に、故人様に関する情報を正確に記入し、期限内に提出しましょう。手続きを一つひとつ着実に進めることが、故人様を心穏やかに見送ることにも繋がります。不明な点は、役所の窓口や葬儀社に相談してください。
死亡届の手続きに関するよくある質問

提出期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
戸籍法では、正当な理由がなく死亡届の提出期限(死亡の事実を知った日から7日以内)を過ぎた場合、届出義務者に対して5万円以下の過料が科される可能性があると定められています。期限内に提出することが原則です。
ただし、災害などのやむを得ない事情がある場合は、その事情がなくなった時点から14日以内に届け出れば問題ありません。万が一遅れてしまった場合は、まずは役所の窓口へ出向き、正直に事情を説明して相談しましょう。
届出人の印鑑は認印でも大丈夫ですか?
はい、死亡届の届出人欄に押印する印鑑は、実印である必要はなく、認印で問題ありません。銀行印などである必要もなく、一般的に使われている三文判などで大丈夫です。ただし、書類に不備があった際の訂正印としても使用します。
注意点として、インクが内蔵された浸透印、いわゆるシャチハタやゴム印は公的書類では認められていません。朱肉を付けて押印するタイプの印鑑を必ず用意してください。
役所の閉庁後や休日でも提出できますか?
はい、ほとんどの市区町村役場では、閉庁している時間帯や土日祝日でも死亡届を提出することが可能です。「時間外受付窓口」や「休日・夜間受付窓口」と呼ばれる場所で、宿直の職員が24時間365日体制で受け付けています。
ただし、時間外に提出した場合、書類の審査は翌開庁日に行われます。そのため、火葬許可証がその場で発行されず、後日改めて受け取りに行く必要がある場合が多いので注意が必要です。
死亡届の用紙はどこでもらえますか?
死亡届の用紙は、通常、右半分の「死亡診断書(死体検案書)」と一体になっています。そのため、故人様が亡くなられた病院や施設で、医師が死亡診断書を作成した際に一緒に受け取ることが一般的です。
もし、用紙を紛失してしまったり、書き損じて予備が必要になったりした場合は、市区町村役場の戸籍担当窓口でもらうことができます。葬儀社に依頼している場合は、担当者が用意してくれることもあります。
本籍地が不明な場合はどうすればいいですか?
故人様の本籍地がわからず記入できない場合は、まず故人様の運転免許証やパスポートなどの公的書類を確認してみてください。記載がある場合があります。それでもわからない場合は、役所で調べることができます。
故人様が最後に住民登録をしていた市区町村役場で、「本籍地記載の住民票の除票」を請求することで、正確な本籍地を確認することが可能です。手続きには本人確認書類が必要になるため、持参して窓口で申請しましょう。