
はじめに:葬儀に行かないと決めても、非常識ではありません
ご親族やご友人など、大切な方の訃報に接し、深い悲しみの中にいらっしゃることと存じます。しかし、仕事や体調、住んでいる場所などの事情から「どうしても葬儀に参列できない」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。「葬儀に行かないなんて、非常識だと思われないだろうか」という不安は、多くの方が抱えるものです。
結論から申し上げますと、葬儀に行かないという選択が、必ずしも非常識にあたるわけではありません。 最も大切なのは、故人を悼むお悔やみの気持ちと、悲しみの中にいるご遺族を思いやる配慮です。参列できなくても、マナーに沿った方法でその気持ちを伝えることは十分に可能です。
この記事では、葬儀に行かないと決めた場合に、非常識と思われず、後悔しないための具体的な連絡方法や香典のマナーについて詳しく解説します。あなたの誠意がきちんと伝わるよう、適切な対応方法を一緒に確認していきましょう。
葬儀に行かないのは本当に非常識?判断する前の確認事項
「葬儀に行かない」と決断する前に、一度立ち止まって考えておくべきことがあります。それは、その選択が本当に非常識にあたるのか、そして何より自分自身が後で悔やまないか、という点です。このセクションでは、欠席を判断するための心の持ち方や、故人との関係性に応じた基準について解説します。大切なのは、世間体だけでなく、ご自身の気持ちと誠意の示し方です。
行かない=非常識ではない!大切なのは弔意の示し方
仕事の都合、遠方であること、あるいは体調不良など、人にはそれぞれやむを得ない事情があります。そのため、葬儀に参列できないこと自体を、誰もが一方的に「非常識だ」と責めるわけではありません。遺族側も、様々な事情があることは理解している場合がほとんどです。
重要なのは、葬儀への参列・欠席という形式ではなく「故人を偲び、遺族を気遣う」という弔意をいかに示すかです。参列できなくとも、香典や弔電を送ったり、後日弔問に伺ったりと、お悔やみの気持ちを伝える方法はたくさんあります。気持ちのこもっていない形だけの参列よりも、心を込めた対応のほうが、あなたの誠意はきっと伝わるはずです。
本当に後悔しないか?自分の気持ちと向き合う
葬儀は、故人と最後のお別れをするための大切な儀式です。他人の目を気にして「行かない」と決める前に、一度立ち止まって「参列しなかったことで、将来自分が後悔しないか」を自問自答してみましょう。
故人との思い出や関係性を振り返り、「やはり顔を見てお別れがしたい」と感じるなら、スケジュールを再調整する努力をしてみる価値はあるかもしれません。一時的な「面倒くさい」「親戚に会うのが億劫」といった感情で判断すると、後々心残りになる可能性もあります。周りの意見よりも、あなた自身の「故人を送りたい」という気持ちを尊重して判断することが大切です。
【関係性別】親族・友人・会社関係者の場合の判断基準
葬儀に参列するかどうかの判断は、故人との関係性によっても変わってきます。誰の葬儀かによって、周囲から期待される対応も異なるため、一般的な基準を理解しておくとよいでしょう。
故人との関係性 | 判断のポイント |
---|---|
親族(祖父母・両親・兄弟など) | 基本的には最優先で参列を検討すべき関係です。ただし、どうしても行けない事情がある場合は、家族や他の親族とよく相談し、欠席の旨を丁寧に連絡しましょう。特に祖母・祖父の葬儀に孫として参列できない場合は、正直な事情を伝え、理解を得ることが大切です。 |
友人・知人 | 生前の付き合いの深さによって判断します。特に親しかった間柄であれば、できる限り参列するのが望ましいでしょう。共通の友人がいれば、相談してみるのも一つの方法です。 |
会社関係者(同僚・上司・取引先など) | まずは会社の規定や上司の指示を確認しましょう。個人的な関係性だけでなく、会社としての弔意を示す代理として参列を求められる場合もあります。自己判断で欠席する前に、一度相談するのがマナーです。 |
そもそも「家族葬」の場合は参列を控えるのがマナー
近年増えている「家族葬」は、ご遺族やごく限られた親しい方のみで故人を見送る形式の葬儀です。そのため、訃報の連絡に「家族葬にて執り行います」「誠に勝手ながら、ご会葬はご辞退申し上げます」といった一文が添えられている場合があります。
このような案内があった場合、遺族の意向を尊重し、参列や弔問を控えるのが基本的なマナーです。良かれと思って会場に駆けつけても、かえって遺族に気を遣わせてしまい、負担をかけてしまう可能性があります。弔意を示したい場合は、後日改めてご連絡するか、香典や供花を送ってもよいかを確認してから対応しましょう。
【重要】非常識と思われないための欠席連絡マナー
葬儀を欠席する場合、その事実以上に「伝え方」が重要になります。ご遺族への配慮を欠いた連絡をしてしまうと、「非常識な人だ」という印象を与えかねません。ここでは、相手に失礼だと思われないための連絡のタイミングや手段、言葉遣いといった基本的なマナーを詳しく解説します。心のこもった丁寧な連絡が、あなたの誠意を伝える第一歩です。
訃報を受けたら、まずはお悔やみの言葉を伝える
訃報に接したら、参列できる・できないに関わらず、まずはいち早くお悔やみの言葉を伝えることが最も大切です。電話や対面で訃報を受けた際は、その場で「この度はご愁傷様です。心よりお悔やみ申し上げます」と伝えましょう。
この段階では、欠席の可能性について長々と話す必要はありません。まずは、突然の不幸に見舞われたご遺族の悲しみに寄り添う気持ちを示すことを最優先にしてください。あなたのその一言が、遺族の心の支えになることもあります。
欠席の連絡はできるだけ早く、電話が基本
葬儀を欠席すると決めたら、その旨をできるだけ早く連絡するのが鉄則です。ご遺族は、参列者の人数を把握して食事や返礼品の準備を進めています。連絡が遅れると、余計な手間や費用をかけさせてしまうことになりかねません。
連絡手段は、自分の声で直接お詫びと弔意を伝えられる電話が最も丁寧な方法です。喪主やご遺族は大変取り込んでいるため、電話をかけたら「お忙しいところ申し訳ありません」と前置きし、簡潔に用件を伝えましょう。時間帯は、早朝や深夜を避けるのが社会人としての配慮です。
メールやLINEで連絡しても良いケースとは?
本来、弔事に関する連絡でメールやLINEといった電子ツールを使うのは略式とされ、避けるべきとされています。しかし、現代では相手との関係性によっては許容されるケースも増えてきました。
例えば、親しい友人で普段からLINEなどで連絡を取り合っている場合や、相手からメールで訃報が届いた場合などです。ただし、その場合でも言葉遣いは最大限丁寧にしましょう。親族や目上の方、会社関係者への第一報としては、やはり電話が適切です。状況に応じて使い分け、迷ったときはより丁寧な方法を選ぶのが無難です。
葬儀に行かない場合の理由の伝え方【例文付き】
欠席を連絡する際、「理由をどう説明すればいいだろう」と悩む方は少なくありません。正直に話しにくい理由の場合、なおさら言葉に詰まってしまうでしょう。このセクションでは、ご遺族に不快な思いをさせず、失礼にあたらない理由の伝え方のポイントを解説します。具体的な例文も交えながら、スマートな伝え方をマスターしましょう。
理由は「やむを得ない事情」と簡潔に伝える
葬儀を欠席する際、その理由を根掘り葉掘り聞かれることはほとんどありません。ご遺族も多忙なため、詳しい事情を説明する必要はなく、かえって相手の時間を奪ってしまいます。
理由は「やむを得ない事情がありまして」「あいにく都合がつかず」といった言葉でぼかして伝えるのが一般的です。結婚式への出席など、お祝い事が理由の場合は、正直に伝えるとかえって相手を不快にさせてしまう可能性があるため、具体的な言及は避けるのがマナーです。「参列できず、誠に申し訳ありません」というお詫びの気持ちを伝えることを重視しましょう。
【例文】仕事や遠方、体調不良が理由の場合
欠席理由を伝える際の具体的な言い方を紹介します。状況に合わせて使ってみてください。
- 仕事が理由の場合
「この度はご愁傷様です。〇〇(故人名)様のご逝去を悼み、心よりお悔やみ申し上げます。あいにく、どうしても都合のつかない業務があり、お伺いすることができません。誠に申し訳ありません。」 - 遠方が理由の場合
「〇〇様の突然の訃報に接し、言葉もありません。本来であればすぐにでも駆けつけたいのですが、遠方のため叶わず、大変申し訳なく思っております。こちらから、心ばかりのお見送りをさせていただきます。」 - 体調不良が理由の場合
「この度は心よりお悔やみ申し上げます。大変残念ながら、現在体調を崩しておりまして、どうしても参列することができません。ご迷惑をおかけし、申し訳ありません。」
親戚付き合いが苦手・主義で行かない場合の考え方
中には「特定の親族に会いたくない」「そもそも葬式という儀式に意味を感じない」といった、個人的な感情や主義を理由に参列したくない方もいるでしょう。これは個人の考え方であり、誰にも否定はできません。
しかし、その本音を正直に遺族に伝えるのは、相手の気持ちを傷つけるだけであり、絶対にしてはいけません。このような場合でも、表向きの理由は「やむを得ない事情」として、弔意は別の形で示すのが大人の対応です。自分の感情と社会的なマナーは切り離して考え、香典や供花を手配するなど、誠意ある行動を心がけましょう。
参列しない場合の香典の準備と渡し方
葬儀に参列できない場合、弔意を示す最も一般的な方法が「香典」です。しかし、いざ準備するとなると「いくら包めばいいのか」「どうやって渡せば失礼にならないのか」など、分からないことも多いでしょう。ここでは、関係性別の香典相場から、郵送や代理人へのお願いの仕方まで、香典に関するあらゆるマナーを詳しく解説します。
香典は渡すべき?関係性別の金額相場
葬儀に参列しない場合でも、お悔やみの気持ちを示すために香典をお渡しするのが一般的です。ただし、ご遺族が「香典辞退」の意向を示している場合は、その意思を尊重し、送らないのがマナーです。金額は故人との関係性によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
故人との関係性 | 香典の金額相場 |
---|---|
両親 | 50,000円~100,000円 |
祖父母 | 10,000円~30,000円 |
兄弟・姉妹 | 30,000円~50,000円 |
友人・知人 | 5,000円~10,000円 |
会社関係者 | 5,000円~10,000円 |
香典袋に入れるお札は、新札を避けて折り目のついた古いお札を使うのがマナーとされています。「急な不幸で、新札を用意できなかった」という意味合いが込められています。
現金書留で郵送する場合の注意点とマナー
香典を直接渡せない場合は、郵送で送ることができます。その際、現金を普通郵便で送ることは法律で禁じられているため、必ず郵便局の「現金書留」を利用してください。
現金書留の封筒には、現金を入れた不祝儀袋をそのまま入れるだけでなく、お悔やみの言葉を綴った短い手紙を添えると、より丁寧な印象になります。手紙には、葬儀に参列できなかったお詫びと故人を偲ぶ気持ち、ご遺族を気遣う言葉などを簡潔に書き記しましょう。宛名は喪主のお名前で、葬儀後1週間以内を目安に、ご自宅へ送るのが一般的です。
代理人に香典を預ける場合のお願いの仕方
会社の同僚や共通の友人など、葬儀に参列する方がいる場合は、その方に香典を預けて代理で渡してもらう方法もあります。この方法なら、郵送よりも早く確実にご遺族へ届けられます。
代理をお願いする際は、相手の負担にならないよう丁寧にお願いしましょう。香典袋の表書きには、必ず自分の氏名をフルネームで記入します。また、受付で記帳する際に代理の方が困らないよう、自分の住所と氏名をメモに書いて渡し、「私の代理で来た旨を受付で伝えてください」と一言添えておくと親切です。
香典以外の弔意の伝え方
弔意を示す方法は、香典だけではありません。状況によっては、弔電や供花、あるいは後日直接お伺いするといった方法が適している場合もあります。大切なのは、形にこだわらず、自分にできる方法で故人を悼む気持ちを表現することです。ここでは、香典以外の弔意の伝え方と、それぞれの方法で気をつけたいマナーについてご紹介します。
弔電(ちょうでん)を送る
弔電は、お悔やみの気持ちを電報で伝える方法です。通夜や告別式で読み上げられるため、参列できなくても、その場で弔意を示すことができます。NTTや郵便局のほか、インターネットの電報サービスからも手配が可能です。
手配する際は、告別式の開始時刻までに葬儀会場へ届くようにします。 訃報を受けたら、なるべく早く準備を始めましょう。宛名は喪主、届け先は斎場(葬儀会場)の住所を正確に記載します。故人の宗教・宗派が分かる場合は、それに合わせた文例を選ぶ配慮も大切です。
供花(きょうか・くげ)や供物(くもつ)を手配する
祭壇にお供えする供花や供物を送ることで、故人への弔意を示す方法もあります。会場が華やかになり、ご遺族の慰めにもなります。
手配の際は、葬儀を執り行っている葬儀社に直接連絡して依頼するのが最も確実です。全体の統一感を保つことができ、宗教上のルールにも配慮してもらえます。ただし、ご遺族が供花・供物を辞退している場合や、会場の都合で受け取れないケースもあるため、必ず事前に葬儀社やご遺族に確認してから手配するようにしましょう。
後日、自宅へ弔問する際のマナー
葬儀には参列できなかったけれど、改めて直接お悔やみを伝えたいという場合は、後日ご自宅へ弔問に伺う方法があります。ただし、葬儀後のご遺族は心身ともに疲れている上、諸手続きで忙しくしています。
そのため、弔問に伺う際は、必ず事前にご遺族へ連絡を取り、訪問しても良い日時を確認することが絶対のマナーです。突然の訪問は、相手にとって大きな負担となります。服装は喪服ではなく、黒や紺など地味な色合いの平服(普段着)で問題ありません。お線香をあげさせていただいたら、お茶などを勧められても固辞し、長居はせず早めに失礼するのが思いやりです。
まとめ:大切なのは故人を悼む気持ち。マナーを守って誠意を伝えましょう

やむを得ない事情で葬儀に行かないという選択は、決して非常識なことではありません。最も大切なのは、故人を心から悼み、ご遺族の悲しみに寄り添う「気持ち」です。
葬儀に参列できない場合は、できるだけ早く欠席の連絡を入れ、香典や弔電、供花など、自分にできる形で弔意を示しましょう。 後日、改めて弔問に伺うのも良い方法です。この記事で解説したマナーや対応方法を参考に、あなたの温かい気持ちをご遺族に届けてください。そうすれば、後悔のない、心のこもったお見送りができるはずです。
葬儀に行かないことに関するよくある質問
ここまで、葬儀を欠席する際のマナーや対応について解説してきましたが、まだ細かな疑問が残っている方もいらっしゃるかもしれません。この最後のセクションでは、多くの方が抱きがちな質問をピックアップし、Q&A形式で分かりやすくお答えします。あなたの不安を解消するための一助となれば幸いです。
葬儀や通夜を欠席するのは失礼・非常識にあたりますか?
やむを得ない事情があれば、葬儀や通夜を欠席すること自体が失礼・非常識と見なされることはありません。大切なのは、欠席する際の連絡マナーと、その後の対応です。事前にきちんと連絡し、香典や弔電などで弔意を丁寧に示せば、あなたの気持ちはご遺族に必ず伝わります。
祖父母など親族の葬儀でも、欠席して問題ないですか?
はい、問題ありません。たとえ近しい親族であっても、仕事や健康上の理由、地理的な問題などで参列が困難なケースはあります。その場合は、他のご家族やご親族に事情を正直に話し、理解を得ることが大切です。参列できない代わりに、香典を多めに包んだり、心のこもった供花を送ったりするなど、別の形で最大限の弔意を示しましょう。
欠席する場合、具体的に何をすればよいですか?
まずはご遺族に電話で連絡し、お悔やみと欠席のお詫びを伝えます。その上で、以下のいずれかの方法で弔意を示しましょう。
- 香典を郵送(現金書留)するか、代理人に預ける
- 弔電を葬儀会場に送る
- 供花や供物を手配する
- 葬儀後に日を改めて自宅へ弔問に伺う
全てを行う必要はありません。ご自身の状況に合わせて、できる範囲で誠意を伝えることが重要です。
参列しない場合の香典はいくら包めばよいですか?
故人との関係性によって異なりますが、基本的には葬儀に参列する場合と同額を目安に考えます。会食などに参加しないことを考慮して、相場より少し控えめの金額を包むという考え方もあります。例えば、ご友人の場合は5,000円~10,000円、祖父母の場合は10,000円~30,000円が一般的な相場です。本文中の相場表も参考にしてください。